旦那に、約束をすっぽかされたことがある。
前夜に飲んだくれて、二日酔いで起き上がることができなかったのだ。
普段出張で家にいない旦那との久しぶりのデートの予定だったから、私はとても楽しみにしていたのに。
今から帰るねと電話があった時も、深夜を回って帰宅した時も、朝早くにトイレに立った時も、
「デート行こうね。約束忘れてないからね。」
と、旦那のほうから言われ、期待に胸はずませていたのに、いざ出かける段になると、ソファから起き上がってこれなかった。
私は悔しさと、恨めしさでいっぱいの気持ちで、ひとりで出かけた。
前夜に旦那と飲んだ飲み仲間のことも嫌いになりそうなくらい、怒っていた。
旦那の顔を見たらひどい暴言を吐きそうで、結局私は夕方まで家に帰らなかった。
ようやく気持ちの整理がついたのは、1週間経ったころだ。
あんなに怒りが持続したのは、人生初めてのことだった。
マッチングアプリで彼氏ができたばかりの友人Hも、同じ目に遭ったという。
友達カップルと4人で飲みに出かけたところ、男同士で予想以上に盛り上がったらしく、彼氏が飲みすぎ、友人Hの家まで引っ張って帰ったそうだ。
スポーツドリンクだの、フルーツだの与えて、甲斐甲斐しく世話を焼いたものの、復活せず、彼氏が正気を取り戻したのは午後2時を過ぎた頃。
「デートの約束、すっぽかされた。いい歳して、お酒に飲まれるなんて、信じられない。」
と友人Hは憤慨した。
いつも友人Hがデートの計画を立てていたが、このときは初めて彼氏の企画したデートに行く予定で、とても楽しみにしていたという。
「だからいま、ケンカ中なの。」
案外どのカップルも同じような悩みを抱えているんだなあ。
向田エッセイの影響か、外で遅くまで飲んで帰ってくるときには、手土産を持ち帰ってくれたら嬉しいのにと思うことがある。
それをするかしないかで、帰りを待つ女の機嫌を取れるかもしれないのに、どうしてその文化が廃れていってしまったのだろう。
しかし旦那とまだ付き合っていた頃、一度だけ、大好きなプリンを買ってきてくれたことがある。
彼からスプーンを受け取り、太るかもしれないと背徳感に苛まれつつベリリと蓋を開けたとき、不思議と気持ちが落ち着いたのを覚えている。
近所に24時間無人営業のサボテンの店ができた。
物珍しく、店の前で佇んでいると、若いカップルが入っていった。
ちょうど先日ほんまでっかTVで、令和の女性は花をもらっても嬉しくないと放送していたのを思い出した。
サボテンならいいのか?
私の場合は、お花もプリンも嬉しいけれど、旦那から手土産や予期せぬ贈り物としてサボテンをもらったらどんな気持ちになるだろうか。
育てなさいという無言のプレッシャーを感じるかもしれない。
しかも私には3度もサボテンを枯らした苦い思い出がある。旦那もそれを知っている。
けれど、飲んだ帰り道、待ち人のことをふと思い出して買ってきてくれるものなら、どんなものでも嬉しいに違いないのだ。

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