大学来の友人3人でランチをした。
前日から集まって一緒に酒を飲み、深夜に脂っこいものをたくさん食べたので、昼は健康志向の定食屋さんに行ってみようということになった。
人気の定食屋のようで、町屋風の店の前のベンチに座り15分ほど待った。
あと10分経っても呼ばれなかったら、ガストへでも行こうかと話していたら、ちょうど店員さんが来て中へ案内してくれた。
ランチのメニューは4つだけ。ハンバーグ定食、お魚定食、冷しゃぶ定食、鳥ステーキ定食だ。
ご飯とお味噌汁がお代わり自由とあり、納豆も付いてくるという。
それぞれ食べたいものを注文して壁にかけられた額縁なんかを見て談笑していたら、思ったより早くお盆が運ばれてきた。
両手に2つ盆を持ったアルバイト店員が私の前にお魚定食を置こうとするも、うまく置けない。
いいですよと言うと、すみませんと言って彼女は四角い盆をテーブルの上に斜めに置いた。
お盆の片側には、ご飯とお味噌汁が並んでいる。
あれ、手前だっけ、奥だっけと悩み、奥を選んでお盆をまっすぐに直した。
いただきますと箸を取り、食べ始める。白ご飯を頬張りながら美味しいねえと感想を述べると、向かいに座った友人Mがゆっくりうなずいてくれたが、その隣の友人Oからは反応がない。黙々と食べ進める友人Oを訝しんでいたら、突然その手が伸びてきた。
「白ご飯とお味噌汁は手前でしょ。」
そう言って私の盆を180度回した。
私はああそうか、ごめんごめんと笑ってごまかした。
そういうの気になるんだよねと、しかめ面をして手を引っ込める友人Oの、昨晩、もんじゃを食べたときに火傷した人差し指の横腹の赤い水ぶくれの跡に目がいった。
「大丈夫なの、それ。」
「気になってしょうがなくて、潰しちゃった。」
火傷したとき、指を見つめて、耳たぶの裏を洗うのに支障が出そうだと悔しそうに嘆いていた。潔癖な性質で、いつも痛くなるほどごしごしこすって洗うという。
誰しも、何かしらこだわりというものがあると思うが、それを他人にも強いるかどうかの境界線は、どこにあるんだろう。
私は、友人Oがお盆の向きを注意してくれたことを嬉しく思った。ウチ側にいるんだと感じた。
でもきっと、耳たぶごしごしは、強制してこないだろう。その話の場合だと私はソト側にいることになる。
帰る道すがら、味噌汁が美味しかったねという話になった。友人Oはちゃっかり、その味の秘密をアルバイト店員に聞いていた。赤味噌と白味噌を混ぜて山椒を少し加えるという。
こんど、やってみようかなあと言うと、友人Oは即座に、「私は無理。」と言った。
「私がお味噌汁を作ると、分量多めに作ってしまって、いつまで経ってもなくならないの。毎日、同じ味噌汁ばかり食べることになってうんざりしちゃう。」
「お椀で水量測って作ればいいじゃない。」
「めんどくさいよ。」
それなら、赤味噌と白味噌を合わせたお味噌汁は、私がいつか作ってあげたいと思った。

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